天然桧(地元の方は「てんぴ」とよぶ)の産地と知られた西土佐藤ノ川。「幡多桧」として奈良県の天理教本部神殿にも使われている。堂が森を望むこの地に拓かれた集落とそれを囲む山々に、昭和初期よりなんと3本の森林軌道(トロッコ)がひかれ、中心部の中土場からは機関車に引かれたトロッコ車両が藤ノ川川に沿って運行。四万十川の用井まで運搬された後、筏を組まれ下流まで運ばれた。藤ノ川集落に向かう手前の唐谷橋にも支線がつくられたので、この地区は計4本の軌道が存在した高知県内では稀な場所と考えられる。下記の資料により「山父、虫木山、大政、唐谷」の4本の支線があったことが確認できる。
林野庁の資料より


下図は、四国森林管理局に開示請求を行い、1ヶ月後に届いた藤ノ川森林軌道の様子を描いた地形図である。概ね正確であるが、あまり詳しく書かれていない所もある。残念ながらインクラインの場所やそれに続く水平方向の路線は描写されていなかったため、言い伝えを元に自分の足で調査し、さらに現地の方に案内してもらった。唐谷支線が載っていないのは、この地図が書かれた後に支線が引かれたからだと思われる。
※インクラインとは、標高差の大きい間の輸送を容易にするための装置。普通,レールを敷いてワイヤロープで木材を載せた台車を昇降させる。

現地調査のために、国有林に入るには担当の森林管理署に連絡をして了承をもらうこと。また、鎖が掛かった林道に入るには同様に鍵を貸してもらうなど了承を得ること。森林管理局委託の業者が作業をしているので、その情報を聞いておくこと。藤ノ川には中心地である小学校付近に公衆トイレがない。車で半時間ほど林道を上がった郷土の森まで行くと立派な水洗トイレがあるのみ。注意しておく必要がある。藤ノ川の国有林はは「あすなろ四国支社」が担当している。彼らの勤務は日曜日を除く日であって土曜祝日は休みではない。それは雨雪等により作業ができない日があるからである。彼らからの情報は有益で、朝6時半くらいのミーティング時に聞くのも良いかもしれない。ただし、森林管理署が扱う図面等を手に入れておく方が聞きやすい。